karutetsu

簿記や経理の基礎のおはなし

簿記の基本(19)T字勘定②

今回はT字勘定の集計の方法について説明していきたいと思います。

1 T字勘定の問題点

T字勘定(てぃーじかんじょう)は,総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)を簡略化したもので,簿記の学習においては大変便利に使うことができます。
ただT字勘定の場合,仕訳を転記しただけでは,その残高を知ることができません。この点は転記の都度,残高を記入していく一般的な総勘定元帳とは異なります。
簿記の学習でT字勘定を使うときは,仕訳をすべて転記した後で,まとめて集計して残高を計算します。

2 借方の勘定科目の残高の計算方法

図①の現金勘定を例に説明します。現金の残高,つまり残っている現金はいくらかということです。まず前期繰越の2,500ですが,これは期首の時点で手元に保管していた現金の額ということです。

ここからスタートして,増えたのが借方の売上の1,000と3,000です。これは現金の入金になりますので,前期繰越に足します。
一方,貸方の仕入の2,000と通信費の500は現金で支払いましたので,この2つは手元の現金が減少したことになるので,引くことになります。
式で表すと2,500+1,000+3,000-2,000-500=4,000となります。
まとめると,現金は借方の勘定科目ですので,借方(左側)の項目はすべて足し,貸方(右側)の項目はすべて引くと残高が計算できます。
迷ったときは,前期繰越がある方を足すと考えて良いでしょう。

3 T字勘定での残高の書き方

実際のT字勘定を書いたときの残高の計算方法の一例を説明します。
図②をご覧ください。まず借方(左側)の金額を全て足します。ここでは前期繰越と2つの売上の取引が記帳されていますので,2,500+1,000+3,000で,合計は6,500となります。
借方に記帳された最後の取引の下(売上3,000の下)に線を引いて,その次の行にこの合計額を記入します。
次は貸方です。貸方の金額を全て足します。ここでは2,000+500で2,500となります。この金額を欄外にメモしておきます。
最後に残高を計算します。借方の合計6,500から貸方の合計2,500を引いた額4,000が残高となります。

図③のように,残高の金額4,000は貸方の記帳されている最後の取引(ここでは通信費500)の次に,次期繰越として書きます。
次期繰越として残高を書いたら,その下に線を引いて,貸方の総合計を書きます。これは,さきほどメモした2,500(貸方に記帳した取引の合計)と残高を合わせたものです。
借方と貸方の合計が一致していることを確認して終了です。

4 T字勘定の注意点

T字勘定での間違いやすい点を2つほど説明します。
まず第一の点は残高の金額ですが,この現金勘定の例の場合,総合計の6,500ではなく,次期繰越の4,000だということです。ここはうっかりしやすいので要注意です。
第二の点は次期繰越の額が貸方の欄に書かれれますが,これは借方の金額だという点です。④の図を見て下さい。この例では,借方の合計が6,500で貸方の合計額が2,500ですから,差し引き借方の方が4,000多くなります。そこで,残高を貸方の下に書くことで,貸借がバランスを取っているような形式にしているわけです。
図でもわかるとおり,この残高4,000は借方の方が4,000多いことを示しているのであって,貸方の残高(貸方の方が多いということ)というわけではないのです。