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簿記や経理の基礎のおはなし

簿記の基本(15)仕訳伝票①

1 仕訳伝票

近年ではIT化やデジタル化の進展で,手書きの伝票を書く機会も減りつつありますし,すでに全く無いという企業もあるかもしれませんが,今回は仕訳伝票(しわけでんぴょう)について説明します。

仕訳帳が帳簿形式で仕訳を順番に記帳していくのに対して,仕訳伝票は一つの仕訳を一枚の伝票に記入したものです。この伝票をまとめて綴じることで仕訳帳と同等のものとなります。

2 仕訳伝票を使う理由

会社の事務を担当する人が一人しかいなければ一冊の仕訳帳でも不都合はありません。しかしそれなりの規模の企業となれば,販売,仕入,在庫,資金,経費などの各部分ごとに複数の担当者や部署に分かれて業務を行うことになります。こういう場合は各担当者や担当部署が,それぞれの業務に関わる仕訳を伝票に書き,これらを集めて経理担当が総勘定元帳への記帳やコンピューターの会計システムに入力するといった方法がとられます。多くの人が分担して業務を行っている場合には伝票式の方が便利ということになります。

3 仕訳伝票の位置づけ

仕訳伝票の位置づけも会社によって少々異なります。伝票に書いた仕訳のデータを会計システムに入力すると,仕訳帳や総勘定元帳が出力される場合には,伝票は仕訳帳の元資料のような役割になります。

また仕訳帳を作成していない会社では仕訳伝票を綴じたものが仕訳帳の代用となります。

さらに仕訳伝票を勘定科目ごとに綴じて総勘定元帳の代わりとする方法もあります。

伝票を利用した帳簿の仕組みを伝票会計(でんぴょうかいけい)といいます。また伝票を作成すること起票(きひょう)といいます。

4 仕訳伝票の種類

仕訳伝票には振替伝票(ふりかえでんぴょう),入金伝票(にゅうきんでんぴょう),出金伝票(しゅっきんでんぴょう),売上伝票(うりあげでんぴょう),仕入伝票(しいれでんぴょう)があります。

会社によってはさらに独自の種類の伝票を使用している場合もあるでしょう。

このうち,振替伝票,入金伝票,出金伝票の3つを使う仕組みを3伝票制,5種類すべて使う仕組みを5伝票制といったりします。ただし振替伝票の1種類だけですべてまかなえますので振替伝票だけを使うケースも多いです。

5 振替伝票

 振替伝票                  No. ××      

   ×× 年 ×× 月 ×× 日        ×× 印   印  ×× 印

  金 額  借方科目    摘     要    貸方科目    金 額     

  350,000     売掛金  商品を掛け販売            売 上         350,000

                                 

  350,000           合  計             350,000  

振替伝票(ふりかえでんぴょう)のイメージです。このような形が一般的ですが会社によって独自の仕様のものを使っているところもあるでしょう。

仕訳帳と同様に,まずは日付を記入します。伝票ではその右に作成者や承認者のサインや印を押す箇所があります。伝票では担当者や責任者など複数の人の手を経て処理がなされることを想定しているためです。

一般的な仕訳帳と同じく,左から借方の金額,借方科目,摘要,貸方科目,貸方の金額を書きます。

一番下の行が合計欄ですので,借方,貸方それぞれの金額の合計を書きます。当然,貸借の合計金額が一致していなければなりません。

伝票は一つの取引につき一枚の伝票を使いますので,余白が多くてもそこに次の仕訳を書くということはしません。