簿記の基本(17)仕訳伝票③
今回は売上伝票について扱います。日商簿記の3級では出題されないようですが,実務では広く利用されていますので,説明しておきたいと思います。
1 売上伝票
売上伝票(うりあげでんぴょう)の様式は会社によっても異なりますが,シンプルな例をあげると下記のようなものです。
この伝票は一つの販売取引ごとに販売した商品等の明細を詳細に記録したもので,取引先ごと,また取引日ごとに分けて起票するのが基本となります。
ただしサービス業などで数日間に渡る業務を行った場合には,それ全体で一つの取引と考えますので,一枚の売上伝票で処理することになるでしょう。
(例)
売上伝票 年 月 日 No.
様
品 名 数量 単価 金 額
××× 15 1,200 18,000
××× 50 400 20,000
計 36,000
消費税額 3,600 合計金額 39,600
売上伝票には品名,数量,単価,金額,消費税額などを記載する欄があるのが一般的です。
2 売上伝票の仕訳
売上伝票を見ていただくとわかりますが,この伝票には勘定科目を書く欄はありません。これは売上伝票の場合,仕訳は借方が売掛金,貸方が売上と決まっているからです。勘定科目の記載がなくともこの仕訳がなされていると考えます。上の例の場合の仕訳は次のとおりです。
(借)売掛金39,600 (貸)売上39,600
3 現金での販売があった場合
掛け売上しかなければ問題ないですが,現金で販売したときは処理方法を少し工夫する必要があります。この場合は一旦,掛けで販売したものとみなし,すぐに売掛金を現金で回収したことにします。つまり現金での販売を掛けでの販売と売掛金の現金回収の二つの仕訳に分割するわけです。売掛金の回収については入金伝票を起票しますので,一つの取引でも売上伝票と入金伝票の2つの伝票が起票されることになります。
(例)現金で10,000の商品を売上た
①通常の仕訳
(現金) 10,000 (売上) 10,000
②伝票を使った仕訳
(売掛金) 10,000 (売上) 10,000 ← 売上伝票
(現金) 10,000 (売掛金) 10,000 ← 入金伝票
4 総勘定元帳への転記
会社で日常的に多くの取引が行われている場合,個々の売上伝票を一つ一つ総勘定元帳へ転記することはとても煩雑になります。そこで売上伝票を一定期間まとめて集計し,その合計額を総勘定元帳へ転記するという手法がとられます。
継続的な取引を行っている場合,一か月分の代金をまとめて販売先に請求を行うことが広く行われていますので,売上伝票の集計も一か月ごとに行っている会社が多いようです。
集計した売上伝票の合計を総勘定元帳へ転記する際は,別途,振替伝票を起票することになります。
また,個々の売上伝票に記載した詳細な売上の情報は,得意先元帳(とくいさきもとちょう)に転記することになります。得意先元帳は,会社によっては売掛帳や売上台帳などとも呼ばれ,顧客ごとに,販売した商品等の詳細,販売金額,入金の状況等を記録した帳簿(補助簿)です。これをもとに請求書の作成が行われるので,販売管理の基本となる帳簿です。
事務作業の流れをまとめると次のとおりになります。(一つの例として考えて下さい。)
売上伝票 → 集計(例えば1ヶ月分) → 振替伝票を起票 → 総勘定元帳へ
↓
得意先元帳へ記録 → 1ヶ月分を集計 → 請求書の発行 → 得意先へ