簿記の基本(11)仕訳①
はじめに
前回までに複式簿記の仕組みと総勘定元帳への記帳を説明しました。複式簿記は一つの取引について2つの面でとらえること,そしてそれを総勘定元帳の借方と貸方に同じ金額を記帳することです。これによって財務諸表の貸借,つまりバランスがとられているわけです。今回はその記帳の準備段階として重要な仕訳(しわけ)について説明します。
1 総勘定元帳の記帳を確認する
前回と似た設例を示します。①は電気代の支払い,②は現金売上の取引です。××は単に記載を省略していると考えて下さい。
【現金】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
繰越金額 1000
①6/5 水道光熱費 電気代×月分 400 600
②6/8 売上 現金販売 800 1,400
【水道光熱費】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 500
①6/5 現金 電気代×月分 400 900
【売上】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 11,000
②6/8 現金 現金販売 800 11,800
まず,総勘定元帳の内容を確認します。日付の前に①と記した取引は現金で電気代を支払ったもので,現金勘定の貸方に400,水道光熱費勘定の借方に400と貸借に同額の金額が記帳されていることが確認できます。
同様に②の取引では現金勘定の借方に800,売上勘定の貸方に800が記帳されており,こちらも貸借が一致していることがわかります。
このように総勘定元帳の貸借に同額を記帳していくことで,最終的に財務諸表の貸借が一致するようにしているのですが,これを確実に間違わないようにする処理が,仕訳(しわけ)です。
2 仕訳(しわけ)の書き方
仕訳とは発生した取引について,勘定科目,貸借,金額を決めることです。
①の取引では,水道光熱費勘定の借方に400,現金勘定の貸方に400を記帳するということを確定させる作業です。
実際には次のように書きます。
例1) (借方)水道光熱費 400 (貸方)現金 400
帳簿の貸借と同じで,まず左側に借方の勘定科目,次にその金額,右側に貸方の勘定科目と金額を書きます。必ず借方と貸方に勘定科目と金額が入っていないと成立しません。 また貸借で金額が一致していないといけません。この作業をした上で,これを総勘定元帳に書き写すという手続きをします。この仕訳という作業を行ってから総勘定元帳に記帳しているので,帳簿上の貸借が常に一致するわけです。
例2) (借)現金 800 (貸)売上 800
借方を(借),貸方を(貸)と省略した書き方です。
例3) 水道光熱費 400 / 現金 400
借方,貸方という語を完全に省いたもので,間に斜め線を書いただけのものですが,簿記の学習では効率を上げるためにこちらを使うことが多いでしょう。簿記や経理を知っている方なら,この斜め線だけで,仕訳であるとわかってもらえるでしょう。