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簿記や経理の基礎のおはなし

簿記の基本(5)貸借対照表

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)の簡単な例を記します。

1 貸借対照表の形式

まずは,この形式を覚えておく必要があります。

〇表題 一番上の中央に貸借対照表と書きます。

〇日付 次にその表題の下に日付を書きます。これは作成の基準となった日で,通常は決算日(年度の終りの日)を書きます。

〇単位 日付を書いた行の右端に単位を記します。大きな会社では千円単位,百万円単位で作成されることもあります。

2 借方と貸方

中央に縦のラインがあり,そこから左右に項目が並んでいるのがわかります。右側の項目のことを貸方(かしかた),左側の項目のことを借方(かりかた)と呼びます。この貸方と借方を合わせて貸借(たいしゃく)といい,貸借の各項目が対照的に並んでいる表が貸借対照表です。

「貸借」という言葉は左側に「貸」,右側に「借」という字が並びますが,実際の表はこれとは逆で,右側が「貸」,左が「借」と,少々ややこしいです。

3 勘定科目

貸借対照表に並んでいる各項目のことを勘定科目(かんじょうかもく)といいます。単に勘定や科目と略されることもあります。右側,すなわち貸方に並んでいる勘定科目を貸方科目(かしかたかもく)と呼ぶことがあります。また同様に左側の借方に並んでいる勘定科目を借方科目(かりかたかもく)と呼んだりします。

4 貸方は負債と純資産

貸借対照表の右側,貸方の勘定科目はその性質から2つのグループに分けることができます。この例では上から3つ,つまり買掛金(かいかけきん),借入金(かりいれきん),未払法人税等(みはらいほうじんぜいとう)は,負債(ふさい)といわれるグループになります。残りの2つ,資本金(しほんきん)と繰越利益剰余金(くりこしりえきじょうよきん)は純資産といわれるグループになります。

負債と純資産のグループに属する勘定科目は貸方科目になりますので,貸借対照表の貸方に記載されます。このとき上から順に負債の勘定科目を記載し,その下に純資産の勘定科目を記載します。

5 借方は資産

貸借対照表の左側,借方の勘定科目はすべて資産(しさん)といわれるグループになります。資産のグループに属する科目は,すべて借方科目となります。

貸借対照表を見ていただくと,左側,借方の項目の中に数字の前に△の印が付いた項目が2ヶ所ほどあります。この△の印は簿記や会計ではマイナスを表しています。これがついている貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)と減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)は,資産の勘定科目なのですが,資産から差し引かれる金額で,マイナスの資産と考えられています。

6 貸借の一致

借方,貸方ともに勘定科目の右側に,金額が記載されます。一番下の行には,借方の合計と貸方の合計が記載されます。この金額を見てわかるように,貸借の合計の金額は一致しています。これは偶然ではなく,必ず一致するようになっています。

貸借が一致するのは,純資産の金額は資産から負債を差し引いたものだからです。例えば借方の資産の合計が500万円,貸方の負債が400万円あるとき,純資産は500-400=100で,100万円となるからです。この原則は貸借対照表の基本となる点なので,必ず押さえておきましょう。

計算式は3つありますが,一番上のものが基本で,これだけを覚えましょう。あとの2つは,それを変形させたものです。

  資産 = 負債 + 純資産  

  負債 = 資産 - 純資産

  純資産 = 資産 - 負債

簡単な例題で練習します。

①資産が300万円,負債が100万円のとき,純資産はいくらですか。

②資産が4億円,純資産が1億円のとき,負債はいくらですか。

③負債が6千万円,純資産が2千万円のとき,資産はいくらですか。

(答え)

①300-100=200(万円)

②4-1=3(億円)

③6000+2000=8000(万円)

計算式で考えるより,次のような簡単な貸借対象表の図で考えた方がわかりやすいですね。

 

簿記の基本(4)財務諸表 

財務諸表(ざいむしょひょう)について説明していきます。前回の簿記の一連の流れのところで,最後に出てきたことからもわかるように,簿記とは最終的に財務諸表を作成することがゴールとなります。

1 財務諸表を作成する目的

財務諸表とは,一般的には決算書(けっさんしょ)などと呼ばれている書類です。企業においては,次のような場面で利用する目的で作成されます。

 ○経営社が会社の経営状況を知るための判断材料とするとき

 ○株主へ会社の業績を報告するとき

 ○税金の申告のとき

 ○銀行から融資を受けるとき

2 財務諸表とはどんなものか

財務諸表にはいくつか種類があるのですが,基本となるのは貸借対照表損益計算書の二つです。

 ○貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)

企業の財政状況(ざいせいじょうきょう)を表す書類です。財政状況とは簡単に言うと,ある時点(通常は決算の日)で,どれだけ現金や土地などの財産があって,また一方で借金などの負債があるのかを示したものです。

貸借対照表のことを通称でB/S(ビーエス)といいます。英語のバランスシートから来ているものです。

 ○損益計算書(そんえきけいさんしょ)

企業の経営成績(けいえいせいせき)を表します。経営成績とは,一定期間(通常は一年間)でどれだけ儲かったのか,もしくは損になったのかということを表した書類です。

損益計算書のことを通称でP/L(ピーエル)といいます。英語のプロフィット・アンド・ロス・ステートメントを略したものです。

3 財務諸表を作成する頻度

通常は年に1回の決算のときに作ります。株式を上場している企業などは3ヶ月ごとに決算の発表をしていますので,その都度,作成する必要があります。

また,企業の内部で事業の進み具合などを確認するために行う月次決算というものもあります。

 

 

簿記の基本(3) 会計期間

1 会計期間

企業の事業活動は永続的に行われますが,これを一定の区切りを設けて,その期間ごとに業績の報告が行われます。この区切りが会計期間(かいけいきかん)で,通常は一年です。

個人経営の事業所では1月1日から12月31日までの一年間を一つの会計期間とします。個人の場合は税務申告の時期(例年2月16日から3月15日まで)が決められているためです。

会社の場合は決算日(けっさんび)を,それぞれの会社で定めることができます。例えば決算日を3月31日と定めた会社の場合は,4月1日から3月31日までの一年間が会計期間となります。

 

2 期首,期末,期中

期首 

会計期間の始めを期首(きしゅ)と言います。3月末決算の会社なら一般的には4月1日の営業開始時点ということになるでしょう。

期末

会計期間の終わりを期末(きまつ)と言います。特に会計期間の最終日のことを期末日(きまつび),または,決算日(けっさんび)と言ったりします。

期中

期首から期末までの間の期間を期中(きちゅう)と言います。

 

3 帳簿と会計期間

帳簿は会計期間が終わると締切(しめきり)という処理をし,次の会計期間に入ると,新たな帳簿を用意するか,新しいページから記帳するようにします。

 

4 決算と財務諸表

財務諸表は各会計期間の業績をまとめたもので,会計期間に合わせて作成しますので,通常は年一回の作成になります。財務諸表を作成する作業を決算(けっさん)といいます。

決算の作業には通常一か月程度かかることが多いので,3月31日決算の会社の場合,4月中に決算の作業を行い,4月末から5月にかけて決算報告を行うという例が多いです。

 

5 会計期間の呼び名

会社の場合,会社が設立された日から最初の決算日までを第一期とし,以後決算日ごとに第二期,第三期と続きます。この他に,令和四年度,2022年度など暦を使って表すこともあります。個人事業所の場合は暦を使う場合が多いようです。

 

 

 

 

簿記の基本(2) 簿記の一連の流れ

1 簿記の処理の流れ

簿記の一連の流れを,ざっと見ておきましょう。

○取引(とりひき)の発生 

 モノを売ったり,買ったり,経費を使うなど会社や個人商店などの事業所の経済活動です。

  ↓ 

○仕訳(しわけ) 

 ここからが簿記になります。発生(はっせい)した取引を帳簿へ記帳する前段階の処理をします。この仕訳が最も重要な手続きです。簿記の学習はこの仕訳のパターンを学ぶことが中心となります。

  ↓ 

○転記(てんき) 

 仕訳したものを帳簿(ちょうぼ)に書き写すことです。

 ↓  

○総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)

 すべての取引を記帳したメインの会計帳簿となります。

 ↓  

○決算整理(けっさんせいり)

 帳簿を締切り,決算書を作成するための調整をします。未処理だった点を調整したり,決算特有の手続きもありますが,これも決算整理仕訳という形で仕訳として処理します。

 ↓  

○財務諸表(ざいむしょひょう)の作成

 決算書類のことです。決算書類を作成して株主へ報告したり,税務申告に利用したりします。

     

2 もう一つの流れ

○取引(とりひき)の発生 

  ↓   

○補助簿(ほじょぼ)への記帳 

取引の発生から,仕訳,総勘定元帳,財務諸表の作成と進むのが,簿記の一連の流れですが,その他に補助簿という帳簿類があります。実務では日常的には補助簿に記帳しておき,まとめて仕訳を行って総勘定元帳への記帳をするといった使い方もされます。

3 用語の補足説明

○発生(はっせい) 取引が行われて帳簿に記録すべきことが生じることを発生(はっせい)といいます。

 

簿記の基本(1)簿記とはどういうものか

簿記(ぼき)を初めて学ぶ方に役立つようなポイントを説明していきたいと思います。

 

1 簿記をマスターするための心構え

①簿記は最初に学ぶ基本的な仕組みを理解することが難しいので,何度が繰り返して読んでみましょう。

②独特な用語がたくさん出てきますが,しっかり覚えるようにして下さい。

③簿記は読むだけでは上達しません。実際に書いたり,計算したりする練習が必要ですので,問題をたくさん解くようにしましょう。

 

2 簿記とは何をすることか

簿記とは帳簿記入(ちょうぼきにゅう)の略とされています。帳簿(ちょうぼ)に記録していくことを記帳(きちょう)といいます。では何のために帳簿に記帳するのかというと,最終的には財務諸表(ざいむしょひょう)という決算書類を作成するためです。

財務諸表とは一年間でどれだけ儲かったのか,また決算(けっさん)の時点でどれだけの財産や負債があるのかをまとめた書類のことです。この財務諸表の作成は会計帳簿(かいけいちょうぼ)の記録に基づいて行われます。

適切な財務諸表を作成するためには,一定の方式に従って帳簿に記帳していく必要があり,この方式やパターンを学ぶことが簿記学習の中心になります。

3 簿記の目的

目的は一つではありませんが,繰り返しになりますが,最も重要なものは財務諸表(ざいむしょひょう)を作成することです。

 ○日常の業務 → 帳簿への記帳

 ○決算のときの業務 → 帳簿に基づいて財務諸表を作成

4 複式簿記単式簿記

適切な財務諸表を作成するために,帳簿の記帳は複式簿記(ふくしきぼき)という方式で行われます。この複式簿記という方式で作成される帳簿として次の二つがあります。

 ○仕訳帳(しわけちょう)

 ○総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)

総勘定元帳がメインとなる会計帳簿で,ここには会社で生じた,すべての取引(とりひき)が記録されます。財務諸表というのは総勘定元帳の記録を元に作られるということになります。仕訳帳は総勘定元帳への記帳の準備段階として作成されるものです。

これとは別に,主に単式簿記の方法によって作成される補助簿という帳簿類があります。

 ○現金出納帳(げんきんすいとうちょう) 

 ○売上帳(うりあげちょう),売掛帳(うりかけちょう)

 ○商品台帳(しょうひんだいちょう)

     など

これらは,一つの目的に絞った個別の帳簿といえるもので,各会社の業務内容に応じて作成されます。形式や種類も様々です。

5 基本的な用語のまとめ

〇簿記(ぼき)    帳簿記入のことです。

〇帳簿(ちょうぼ)  取引を記録した書類のことです。

〇記帳(きちょう)  帳簿に記録していくこと。

〇財務諸表(ざいむしょひょう)  決算書類のことです。

〇仕訳帳(しわけちょう)  総勘定元帳に記帳する前の準備段階として行う仕訳(しわけ)を記したもの。

〇総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう) すべての取引を網羅したメインとなる帳簿です。

〇会計帳簿(かいけいちょうぼ) 総勘定元帳のことですが,その他の補助簿を含めた帳簿全般を指すこともあります。

〇取引(とりひき)  事業所におけるモノの売り買いや経費の支払いといった経済活動。

〇補助簿(ほじょぼ) 総勘定元帳以外の帳簿類の総称です。

〇現金出納帳(げんきんすいとうちょう) 現金の入金,出金を記した補助簿の一つ。

〇売上台帳(うりあげだいちょう) 得意先ごとに販売した内容や,入金の状況を詳細に記した補助簿の一つ。売上帳,売掛帳,得意先元帳などの名称もあります。

〇商品台帳(しょうひんだいちょう) 商品をアイテムごとに入荷,出荷,在庫の数量を記録したものです。商品在高帳(しょうひんありだかちょう),在庫帳などの名称もあります。