簿記の基本(12)仕訳②
仕訳についての続きを説明していきます。
1 複合的な仕訳
前回の説明で電気代の支払いと,現金売上の仕訳を説明しました。
① 水道光熱費 400 / 現金 400
② 現金 800 / 売上 800
これれはどちらも借方と貸方に一つの勘定科目が入る単純な形ですが,3つ以上の勘定科目が出てくる複合的な仕訳もあります。検定試験ではむしろそのような複雑な仕訳が出題される傾向にあります。
(例題)商品¥300を仕入れ,¥100は現金で支払い,残りは掛けとした。
仕入代金の一部は現金で支払い,残り(300-100=200)は掛け,つまり後日払いとしたということです。この掛けの部分は買掛金といい,言わば一時的な借金のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。現金が100減り,買掛金が200増え,その理由としては仕入が300増えたということです。これを仕訳にすると次のようになります。
(借)仕入 300 (貸)現金 100
買掛金 200
この仕訳では,借方の科目が一つなのに対して,貸方の科目が二つあります。このように貸借の科目が1対1ではなく,1対2や,その反対の2対1,あるいはもっと複雑な2対3など色々なパターンが考えられます。
注意していただきたいのは,科目がたくさん出てくる複雑な仕訳であったも,借方と貸方の金額の合計はかならず一致させなければならないということです。ここでは借方は仕入の一つだけで300です。貸方は現金の100と買掛金の200,合わせて300になりますから,借方と一致するわけです。科目がたくさんでてくる仕訳ではこの借方と貸方の合計金額の一致を確認しておくことが非常に大切になります。
2 成立しない仕訳
次のような仕訳は成立しませんので注意しましょう。
①借方または貸方だけの仕訳
(借)水道光熱費 200 (貸) なし
(借) なし (貸)売上 500
②勘定科目が無い仕訳
(借) 200 (貸) 現金 200
勘定科目が確定しないと仕訳はできません。仮払金(かりばらいきん)などの勘定科目て一時的に記帳しておき,あとで調整するという方法もあります。
③金額がない仕訳
(借) 売掛金 (貸) 売上
金額が未確定な場合も仕訳できません。
④貸借の金額が一致しない仕訳
(借)水道光熱費300(貸)現金 200 ←借方と貸方の金額が不一致
(借) 仕入 500(貸)現金 300 ←貸方の合計が600で借方と不一致
買掛金300
⑤貸借を間違えたもの
(借)水道光熱費400 (貸) なし
現金 400
現金を貸方とすべきところを借方にしてしまい,借方に2つの科目で貸方には科目なしの状態,貸借の金額も不一致となっている。
3 仕訳の要点
仕訳をする際には次の点はかならず守って下さい。
①借方と貸方に勘定科目と金額があること
②借方の合計金額と貸方の合計金額が一致していること
簿記の基本(11)仕訳①
はじめに
前回までに複式簿記の仕組みと総勘定元帳への記帳を説明しました。複式簿記は一つの取引について2つの面でとらえること,そしてそれを総勘定元帳の借方と貸方に同じ金額を記帳することです。これによって財務諸表の貸借,つまりバランスがとられているわけです。今回はその記帳の準備段階として重要な仕訳(しわけ)について説明します。
1 総勘定元帳の記帳を確認する
前回と似た設例を示します。①は電気代の支払い,②は現金売上の取引です。××は単に記載を省略していると考えて下さい。
【現金】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
繰越金額 1000
①6/5 水道光熱費 電気代×月分 400 600
②6/8 売上 現金販売 800 1,400
【水道光熱費】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 500
①6/5 現金 電気代×月分 400 900
【売上】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 11,000
②6/8 現金 現金販売 800 11,800
まず,総勘定元帳の内容を確認します。日付の前に①と記した取引は現金で電気代を支払ったもので,現金勘定の貸方に400,水道光熱費勘定の借方に400と貸借に同額の金額が記帳されていることが確認できます。
同様に②の取引では現金勘定の借方に800,売上勘定の貸方に800が記帳されており,こちらも貸借が一致していることがわかります。
このように総勘定元帳の貸借に同額を記帳していくことで,最終的に財務諸表の貸借が一致するようにしているのですが,これを確実に間違わないようにする処理が,仕訳(しわけ)です。
2 仕訳(しわけ)の書き方
仕訳とは発生した取引について,勘定科目,貸借,金額を決めることです。
①の取引では,水道光熱費勘定の借方に400,現金勘定の貸方に400を記帳するということを確定させる作業です。
実際には次のように書きます。
例1) (借方)水道光熱費 400 (貸方)現金 400
帳簿の貸借と同じで,まず左側に借方の勘定科目,次にその金額,右側に貸方の勘定科目と金額を書きます。必ず借方と貸方に勘定科目と金額が入っていないと成立しません。 また貸借で金額が一致していないといけません。この作業をした上で,これを総勘定元帳に書き写すという手続きをします。この仕訳という作業を行ってから総勘定元帳に記帳しているので,帳簿上の貸借が常に一致するわけです。
例2) (借)現金 800 (貸)売上 800
借方を(借),貸方を(貸)と省略した書き方です。
例3) 水道光熱費 400 / 現金 400
借方,貸方という語を完全に省いたもので,間に斜め線を書いただけのものですが,簿記の学習では効率を上げるためにこちらを使うことが多いでしょう。簿記や経理を知っている方なら,この斜め線だけで,仕訳であるとわかってもらえるでしょう。
簿記の基本(10)総勘定元帳②
今回は引き続き総勘定元帳の記帳の例を現金販売の例を使って説明します。
1 総勘定元帳
今回の例は¥500の商品を現金で販売したという簡単なものです。
この場合,売上と同時に代金の¥500が入ってきますので,現金が500増加したことはすぐにわかります。その要因はというと売上が増えた(発生した)ということになります。
現金 500 増加
売上 500 増加
この取引では,上記の2つがセットになります。
次に実際の総勘定元帳で示します。
【現金】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 800
7/4 売上 現金販売 500 1,300
【売上】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 4,000
7/4 現金 現金販売 500 4,500
2 相手勘定
この例では現金と売上の2つがセットになっているわけですが,このとき現金からみて売上が,売上からみて現金が相手勘定となります。
3 借方欄と貸方欄
今回は現金は増加しています。現金は借方(資産のグループ)の勘定科目ですから,増加するときは,その金額を借方の欄に記帳します。
売上は損益計算書の右に記載される収益のグループになりますので,こちらは貸方の勘定科目です。よって増加したときは貸方に,減少したら借方の欄に書きます。今回は増加しているので,貸方に記帳します。
4 残高
最後に残高ですが,現金は借方の科目ですので借方の金額は増加,つまりプラスとなります。ここでは借方に500記帳しましたので,一つ前の残高800に500を足して1300となります。
売上は貸方の科目ですので貸方の金額が増加,つまりプラスとなります。ここでは貸方に500記帳しましたので,一つ前の残高4000に500を足して4500になります。
5 貸借の一致
この例でも借方と貸方に同じ金額が記帳されたことが確認できます。
6 まとめ
【現金】←資産や費用のグループに属する勘定科目(借方科目)
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
繰越金額 800
×× 売上 現金販売 500 1,300 ←(+)
×× 旅費交通費 タクシー代 300 1,000 ←(-)
(+) (-)
資産や費用のグループに属する勘定科目(借方科目)では借方は増加,貸方は減少です。借方の金額は残高にプラスし,貸方の金額はマイナスします。
【売上】←負債や純資産,収益のグループに属する勘定科目(貸方科目)
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 4,000
×× 現金 現金販売 500 4,500 ←(+)
×× 買掛金 販売商品の返品 400 4,100 ←(-)
(-) (+)
負債や純資産,収益のグループに属する勘定科目(貸方科目)では借方は減少,貸方は増加です。借方の金額は残高にマイナスし,貸方の金額はプラスします。
簿記の基本(9)総勘定元帳①
前回は複式簿記のイメージを簡単な例で説明しましたので,今回はもう少し具体的な総勘定元帳の記帳について説明していきます。
1 総勘定元帳
総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)は会社のすべての取引を記録したメインとなる会計帳簿で,各勘定科目ごとにページが設けれれており,それを一冊にまとめているものです。
電気代¥300を現金で支払うという例で説明します。前回では,複式簿記とはモノやお金の増減と,その要因の両方を同時にとらえて記帳していくものと考えるとわかりやすいと書きました。この電気代の例では現金が¥300減少し,その理由として水道光熱費が¥300増加した(発生した)ということになります。複式簿記ではその名のとおり,この2つがセットになるわけです。
現金 300 減少
水道光熱費 300 増加
次に実際の総勘定元帳で示します。
【現金】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
繰越金額 1000
5/15 水道光熱費 電気代×月分 300 700
【水道光熱費】
日付 相手勘定 摘 要 借方 貸方 残高
×× ×× ×× ×× 250
5/15 現金 電気代×月分 300 550
2 相手勘定と摘要
総勘定元帳は上記のような記入欄があるのが一般的です。この例では現金と水道光熱費の2つがセットになっているわけですが,このとき現金からみて水道光熱費を,水道光熱費からみて現金のことを相手勘定といいます。2つでセットといいましたが,もう一方の勘定科目のことです。摘要は取引の内容や説明です。実務的においては摘要欄は必要ですが,相手勘定は絶対必要というわけではありません。ただ相手勘定があると,それだけで取引の内容がすぐわかるので利用されることも多いです。
3 借方に書くか貸方に書くか
金額欄ですが,増加額や減少額を記録する欄が,借方と貸方となっています。右が貸方,左が借方なのは,貸借対照表や損益計算書と全く同じで,これはすべての勘定科目に共通しています。
問題は,借方,貸方のどちらに書くかですが,これはすべての勘定科目に共通した基本原則がありますので,これを押さえておきましょう。
借方の勘定科目(資産と費用のグループ,貸借対照表と損益計算書で左側にある)
→増加したときは借方,減少は貸方
貸方の勘定科目(負債,純資産と収益のグループ,貸借対照表と損益計算書で右側にある)
→増加したときは貸方,減少は借方
増加する金額は借方の科目は借方に,貸方の科目は貸方に記帳します。減少はその反対側ということです。
今回の例を改めて示すと次のとおりでした。
現金 300 減少
水道光熱費 300 増加
現金は貸借対照表の左に記載される資産のグループになりますので,借方の勘定科目です。ですから現金が増加したら借方に,減少したら貸方の欄に書くわけです。今回は減少しているので貸方に記帳します。
水道光熱費は損益計算書の左に記載される費用のグループになりますので,こちらも借方の勘定科目ですね。よって増加したときは借方に,減少したら貸方の欄に書きます。今回は増加しているので,もちろん借方に記帳します。
4 残高
最後に残高ですが,現金も水道光熱費も借方の科目ですので,借方の金額は増加,つまりプラスとなります。貸方の金額は減少,すなわちマイナスです。現金では一つ前の残高1000から300を引いて,700となります。一方,水道光熱費では,一つ前の残高250に300を足して550になります。ここでプラスとマイナスを間違えると残高が合わなくなるので注意しましょう。
5 貸借の一致
ここであらためて現金と水道光熱費の帳簿を見て下さい。現金の勘定には貸方に300,水道光熱費の勘定には借方に300記帳されています。総勘定元帳のいずれかの借方と貸方に同額の金額が記帳されたことになります。これは偶然そうなったのではありません。複式簿記ではこのように帳簿の借方と貸方に同時に同じ金額を記帳していきます。貸借対照表や損益計算書は総勘定元帳の記帳をベースとしています。帳簿の貸借に同じ金額を記帳していくという仕組みが守られているからこそ,貸借対照表や損益計算書の貸借が一致することになるのです。
簿記の基本(8)複式簿記
今回は複式簿記のイメージが理解しやすいよう簡単な例で説明していきます。
1 現金の入出金の状況だけを記録した場合
まず最も単純な帳簿の例として現金出納帳(げんきんすいとうちょう)があります。これは現金の入金と出金を記録したもので,子供のおこづかい帳のようなものとほぼ同じと考えて下さい。
入金と出金を合わせて入出金(にゅうしゅっきん)といいます。
【現金】 入金 出金 残高
繰越金額 1000
①5/10 帳簿を購入した 100 900
②5/15 電気代を支払った 300 600
③5/16 筆記用具を購入した 200 400
④5/19 タクシー代 300 100
⑤5/20 預金を引き出した 1000 1100
⑥5/25 水道代を支払った 200 900
⑦5/27 電車運賃 100 800
現金出納帳には,日付,お金の使い道と,その金額,そして現金の残高を記帳していきます。この帳簿では,日々のお金の出入りは明確にわかりますし,今いくら残っているのかもすぐに知ることができます。
しかし,どの項目にいくら使っているのか,これだけだとすぐにはわかりません。それはどこにも書かれていないからです。
2 現金の入出金のとき経費の項目別の帳簿にも記録する
お金の動きがわかる「現金」の記録に加えて,「水道光熱費」と「文房具代」,「交通費」という項目を記帳していく3つの項目(勘定科目)について帳簿を追加して,お金を使ったごとに,こちらにも記帳していくことにします。必ず同じ金額を書いていきます。
【水道光熱費】
(日付) (内容) (金額)(合計)
②5/15 電気代 300 300
⑥5/25 水道代 200 500
【文房具代】
(日付) (内容) (金額)(合計)
①5/10 帳簿 100 100
③5/16 筆記用具 200 300
【交通費】
(日付) (内容) (金額)(合計)
④5/19 タクシー代 400 400
⑦5/27 電車賃 100 500
①から⑦の番号は現金出納帳の①から⑦に対応しています。①の例では現金で帳簿を購入していますが,「現金」の所と「文房具代」という所の2ヶ所に,同時に同じ金額を記帳していきます。それぞれの帳簿にも日付,使った内容,金額,累計を記帳していきます。こうすると,現金の動きと使い道の各項目の金額を同時に把握することができるようになります。
なお,実際には⑤の預金の引き出しについても普通預金を記録する帳簿に記帳していきます。このように,必ず複数の箇所に記帳していくのが複式簿記です。
3 複式簿記とは
上記の簡単な設例で示しましたが,複式簿記とはモノやお金(今回の例では現金)の増減(出入り)と,その要因の両方を同時にとらえて記帳していくものと考えるとわかりやすいでしょう。
このパターンに当てはまらない取引も多々ありますが,まずは取っ掛かりとして下さい。
要因は「理由」「原因」や「訳(わけ)」とやさしくとらえてもらってもかまいません。
今回の例では,「現金が減少しましたが,その訳は何でしょうか。それは電気代という水道光熱費が増えた(発生した)からです。」ということになります。文房具や交通費の例も同様です。
⑤の預金を引き出した例を考えてみましょう。この場合,預金を引き出したので手元の現金は増加しています。「現金の増加の原因は何でしょうか。それは預金の減少である。」と考えることができます。しかし反対に預金を基準にして考えると,「預金が減少した。その原因は現金増加である。」とも言えます。このようにお金やモノどうしではどちらが原因でどちらが結果なのかはっきりしませんが,これはどちらでも構わないのです。
4 例題
典型的な取引の例で少し練習をしましょう。それぞれモノやお金がどう動いたのか,その要因は何かを考えて下さい。
(ア)現金で商品を販売した。
現金が増加し,その要因は売上の増加と考えましょう。
(イ)銀行から融資を受け資金は普通預金に振り込まれた。
普通預金が増加し,その要因は借入金(かりいれきん)の増加と考えられます。
借入金が増加し,その要因は普通預金の増加であるとしても同じです。借入金はマイナスの「モノ」と考えることができます。預金引き出しの例と同様にお金やモノどうしでは因果関係ははっきりしませんが,どちらでも同じです。
(ウ)建物の修繕を行ったが,代金は来月末に支払う予定である。
未払金が増加し,その要因は修繕費の増加です。未払金は簡単に言えば借金の一種です。修繕をしてもらったので,本来はすぐに支払うべきですが,支払いを待ってもらっている状態,つまり一時的に借金をしているのと同じですね。この未払金はマイナスの「モノ」と考えることができます。
簿記の基本(7)取引と記帳のタイミング
1 取引とは
簿記をやっていると頻繁に使われる用語に取引(とりひき)というものがありますので,ここで少し詳しくお話ししたいと思います。簿記や会計でいう取引とは一般的な商取引などと少し異なっていて,記帳すべきことがらのことをいいます。
例えば会社が他の会社と何らかのビジネス上の契約をしたら,通常は取引が成立したと考えますが,それだけでは帳簿に記帳すべき事項が無いため,簿記上の取引とはなりません。
一方で,従業員に給料を支払っても一般的には取引とはあまり言いませんが,これはもちろん帳簿に記帳されることがらなので取引ということになります。
2 発生とは
簿記の世界でよく使用される用語に発生(はっせい)というものがあります。これは記帳すべき取引が生じることと考えてよいでしょう。取引と発生を組み合わせて,「取引の発生」と言ったりします。
3 記帳のタイミング
企業において日々,様々な経済活動が行われていますが,いったいどの時点で帳簿に記帳すべきかという点を押さえておきましょう。
帳簿への記帳のタイミングは,実際に商品やサービスの提供があったり,金銭の支払いや受け取りがあったときとするのが基本です。簿記や会計ではこの時点で取引が発生したと認識するわけです。
商談や契約の成立 ・・・・ 簿記では取引は発生していない=記帳しない
↓
商品やサービスの提供 ・・・・ 取引が発生した=記帳する
↓
代金の支払いまたは受け取り ・・・・ 取引が発生した=記帳する
4 簡単な練習問題
いくつか事例を挙げましたので,簿記上の取引が発生したものとして記帳されるものなのかどうか考えて下さい。
物,サービスの提供や移動,現金や預金の移動を基準にするとわかりやすいでしょう。
①他社に商品を販売する契約を結んだ。
②商品の注文を受けた。
③商品を出荷した。
④商品の代金が普通預金に振り込まれた。
⑤現金で交通費を支払った。
⑥土地を購入した。
⑦営業用の自動車を修理してもらった,代金は来月支払う予定。
⑧新規に出店のため賃貸契約を結んだ。
⑨従業員を一名採用した。
⑩給料を振込で支払った。
簡単に解説をします。
記帳されるものは○,ならないものは☓とします。
①他社に商品を販売する契約を結んだ。 ☓ 契約しただけでは記帳しません。
②商品の注文を受けた。 ☓ ①と同様です。
③商品を出荷した。 ○ 物,サービスの提供
④商品の代金が普通預金に振り込まれた。○ 現金や預金の移動
⑤現金で交通費を支払った ○ 物,サービスの提供,現金や預金の移動
⑥土地を購入した。 ○ 物,サービスの提供
⑦営業用の自動車を修理してもらった,代金は来月支払う予定。
○ 物,サービスの提供
⑧新規に出店のため賃貸契約を結んだ。 ☓ ①と同様です。
⑨従業員を一名採用した。 ☓ ①と同様です。
⑩給料を振込で支払った。 ○ 現金や預金の移動
5 会計帳簿以外への記録
上記②の商品の注文を受けたときですが,何も記帳しないのかと疑問に思う方も多いと思います。ここで説明している記帳とは複式簿記による会計帳簿のことです。注文を受けただけでは簿記上は取引とはなりませんので会計帳簿には記帳しませんが,これとは別にお客さんからの注文を「受注台帳」などに記録して管理しておく必要があります。
簿記の基本(6)損益計算書
損益計算書(そんえきけいさんしょ)の簡単な例を記します。
1 損益計算書の形式
貸借対照表と同様に,この形式を覚えておきましょう。
〇表題 一番上の中央に損益計算書と書きます。
〇日付 次にその表題の下に日付を書きます。損益計算書は貸借対照表と異なり,一定の期間を対象として,その業績をまとめたものなので,期間の最初の日(期首日)と,最後の日(期末日)の両方を書き,××から××までと記します。期首日の前に自(じ,~より),期末日の前に至(し,~まで,いたる)と書く場合もあります。
(例)
2021年6月1日から2022年5月31日まで
自令和3年9月1日 至令和4年8月31日
〇単位 日付を書いた行の右端に単位を記します。大きな会社では千円単位,百万円単位で作成されることもあります。
2 借方と貸方
中央に縦のラインがあり,右側の項目のことを貸方(かしかた),左側の項目のことを借方(かりかた)と呼ぶのは,貸借対照表と同じです。
3 勘定科目
損益計算書に並んでいる各項目は勘定科目(かんじょうかもく)です。これは貸借対照表と同じです。右側,すなわち貸方に並んでいる勘定科目を貸方科目(かしかたかもく),左側の借方に並んでいる勘定科目を借方科目(かりかたかもく)と呼ぶのも同様です。
4 貸方は収益
損益計算書の右側,つまり貸方の勘定科目はその性質から収益と(しゅうえき)というグループになります。最も代表的な収益の勘定科目は売上高(うりあげだか)で,これを一番上に書き,その下にその他の収益のグループに属する勘定科目が並びます。
5 借方は費用
損益計算書の左側,借方の勘定科目はすべて費用(ひよう)といわれるグループになります。費用のグループに属する科目は,すべて借方科目となります。
6 貸借の一致
借方,貸方ともに勘定科目の右側に,金額が記載されます。一番下の行には,借方の合計と貸方の合計が記載されます。この金額を見てわかるように,貸借の合計の金額は一致しています。これも偶然ではなく,必ず一致するようになっています。
貸借が一致するのは,収益の合計金額から費用の合計金額を差し引いた額を当期純利益として借方の一番下の行に記載するからです。
例えば貸方の収益の合計が800万円,借方の費用の合計が700万円とします。これだけでは貸借は一致しません。ここで,800万円から700万円を引くと100万円となりますが,これは収益から費用を引いたもので,これが利益(りえき)となります。
この利益を費用の次に記載することで,貸借を一致させているわけです。
この収益と費用,利益の関係も,計算式は3つ考えられますが,一番上のものが理解できれば,あとの2つはそれを変形させたものにすぎないという点は,貸借対照表のときと同じです。
収益 - 費用 = 利益
費用 = 収益 - 利益
利益 = 収益 - 費用
ここでも簡単な例題で練習しましょう。
①収益が5000万円,費用が4200万円のとき,純利益はいくらですか。
②収益が14億円,純利益が1億円のとき,費用はいくらですか。
③費用が600万円,純利益が50万円のとき,収益はいくらですか。
(答え)
①5000-4200=800(万円)
②14-1=13(億円)
③600+50=650(万円)
これも計算式で考えるより,次のような簡単な図で考えた方がわかりやすいですね。